赤い燃料
作:hiro ※この作品の著作権はぼくちゃんのものです。
もう、限界である。これ以上の飛行は危険すぎる、

燃料も底をついている。

あの赤く輝く燃料を早く見つけ出し、それを補給出来なければ、そ

れは二度と自分の世界に帰ることが出来ないという事を意味してい

た。

この暗い世界にそれは本当にあるのだろうか。

この世界は全くの未知の世界であった。真っ暗な世界、光を感じな

い世界。しかしその暗さはなんとなく自分には安心がただようので

あった。

自分の知らない物を上にも左右にも感じられる。広すぎる世界では

あるが、有限であることには間違いがない。だが、どこに近付き調

査を行っても目的の「赤い燃料」はなかった。

あせりは感じるが、慎重に飛行し、なおかつ最低の燃費で飛行する

事を要求されていた。

いったいその目的の燃料はどこにあるのか。それが解ればいいのだ

が、一切の情報はない。ただ本能に聞き本能に従うしかすべはない

のだ。

次の瞬間、その暗い世界の奥に何かを感じた。このバリアの向こう

に何かがある。きっとある。そう本能が自分にささやいた。

そして、バリアをかわし進むと、そこには気の遠くなる程の巨大な

山があった。

この湿度の違いと、かすかな二酸化炭素の違い。そして温度の違い

は、それがここにある事を物語っていた。

「目的の山に間違いない。」

ここにたどり着いたのはほとんど奇蹟と言ってもいいだろう。

そして慎重に着陸をした。

燃料の補給には昔ながらのプロセスがあった。燃料補給中の地震に

は細心の注意が必要なのである。地面に鋭いパイプを刺すのにもこ

つがあったし、自分の用意してある不思議な液体を使うのも知って

いた。

「赤い燃料」を補給し、自分の飛行可能なかぎりに満タンとなっ

た。その時である。暗闇のどこからか忍びよってきた自分の数億倍

もありそうな巨大な物体に、自分がゆっくり押し潰されるのを感じ

た。

せっかく補給に成功した赤い燃料はあたりにまきちらされ、無惨に

も自分は潰れてしまった。

「うう、かゆい。頭にくる蚊だ。」

「こんなに血を吸っていたなんて、まったく。」

こんど産まれてくる時には、もっと巨大な何かになろう。

そう心に誓った瞬間であった。     

              END


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