「わたし、あなたと同じものでいいわ。まかせる。」
あら、これシャンパンかしら、私アルコールによわいのよね。
でもいいか。彼と一緒だし、飲んじゃお。
そう言えば、私の車、どこに停めたっけ・・・思い出せない。
まあ、大きな海老。
お酒のせいなのかな海老がいつもと違う。いろんな色に輝いて見えるん
だけど、でも楽しい。
彼はやさしいし、まるで夢を観てるみたいだわ。でも夢じゃないよね。
これが夢だったら許さない。
でも夢じゃないでしょう。こんなにはっきりした夢は一度も観た事がな
いもの。それに夢ならもうとっくに覚めているわ。
「なあに。」
「きみえちゃん。」
何度も言わないでよ。
「きみえちゃん。ごめんね。」
どうしてあやまるの?
それとも何かよくないことを言いたいの?
「ぼくが誘ったばっかりに。」
誘っていただいて、今日はこんなに幸せよ。
ありがと。
「ぼくはこれからどうしたらいいんだ。」
なんで泣くのよ。それとも何かあったの?
「どうか死なないでほしい。」
え?何を言ってるの?
「目を覚ましてほしい。」
え?私の事?
私、また寝てしまったの?
あら、急にこのお店の内装が、変わっちゃった。
「ここはどこ?」
「患者さんが目を覚ましました。」
患者さんてわたしの事?
「きみえちゃん。・・・・・よかった。」
「建治さん、どうして泣くの。ここは病院?」
「そう、病院だよ。覚えてないんだね。」
「一緒に映画観たわよね。」
「ううん。見てないよ。」
「一緒にコーヒー飲んだ?」
「飲んでないよ。」
「うそ、夢だったの。」
「きみえちゃんは、高速道路で事故に会ったんだよ。」
「え〜。うそ。じゃ、あの喫茶店は、入口に鳥がいたお店。」
「そうか、喫茶店の夢を観てたんだね。」
「映画も観たし、食事も。・・・・・・・」
「きみえちゃんは、ぼくに会う前に事故に会った。」
「じゃ、全部夢だったんだ。」
この待ち合わせ場所には恐くって、なかなかこれなかった。
でも建治さんは、どうしてもこのお店って言うから。
でも、あのときの喫茶店とはまるで違うわ。
これが現実ね、
だって、だって、
このコーヒー。ほろにがくて、おいしい。
END