「ここと、そこの席だね。」
「うん。」
ひさしぶりに来た感じ。やっぱり来てよかった。彼と二人だと、どん
な映画だってだいじょうぶ。こわいのもだいじょうぶ・・・かな。
あ、始まった。すごい。いきなり。きれいだ〜。やっぱり大画面は迫
力が違うわね。まるで自分が本当に空を飛んでるみたい。
あっちの空は暗いわね。下の方に見える樹がなんか気になるわ。
ああ、向こうの方に街が見える。・・・・・・・
ちょっとまって。これってひょっとして、私、自分の夢を観てるんじゃ
ない、・・・まさかそんな、映画じゃなくて。
だっていつも観てる夢と同じところのような感じがする。
「きみえちゃん。」
「ん?」
「きみえちゃん。寝ちゃったの?」
あ。映画を観ながら、夢を観てたんだわ。
「ごめんね。いつの間にか眠っちゃった。」
「仕事で疲れてたんだね。」
「ううん。」
「そろそろ映画も終わりだから、食事に行かない?」
「え、もうそんな時間なの?」
せっかく誘ってくれた映画なのに、私ったら、いつの間に眠ってしまっ
たんだろう。
「このタクシーに乗ろう。」
ああ、なんかこのタクシーもすごく眠くなる運転だわ。ふわふわしてて
それとも、彼とのデートに酔ってしまったのかしら。
「眠いのなら、よりかかって寝てもいいよ。」
こんなにやさしい人だったっけ、彼って。こんなに幸せなら、ずっとこ
うしててもいいんだけど。
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